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10Dec

「国境の南、太陽の西」 村上春樹

Posted by somanybooks in NovelAndComic

村上春樹氏の描き出す異性論です。


■ 説明(あらすじ)

一人っ子だった「僕」は小学生の時、同じく一人っ子だった「島本さん」と心を分かち合うようになりますが、彼女の転校により離れ離れになってしまいます。

その後高校生になった僕は、「イズミ」という日曜日の朝のような気持ちの良い子と付き合いつつも「イズミの従妹」と肉体関係を持ったことで、イズミを徹底的に損なったまま別れます。その後三十才に「有紀子」という女性と結婚し、子どもにも恵まれ、ビジネスの上での成功を収めた頃なって、僕は島本さんと再会することになるのですが……。


■ 感想という名の純文学的読み解き

この著作のテーマは、異性としての女性ではないかと感じました。

「イズミ」と「イズミの従妹」の位置づけが対象的で見事です。イズミとは心の通い合わせのみで、イズミの従妹とは性交渉のみで会話すらないことを考えると、イズミは僕の恋心の精神面を担い、イズミの従妹が僕の恋心の肉体面を担う存在です。精神的にはイズミに惹かれ、肉体的にはイズミの従妹に惹かれる高校生の僕は、身体と心が乖離しがちな十代後半の男性の恋をくっきりと描き出しているように思います。

そして本のタイトルに冠された「国境の南」と「太陽の西」。国境の南は、深く知る前は関心とあこがれの対象であり深く知ってみるとあまりに平凡でがっかりさせる存在として描かれます。そして太陽の西は、平凡な生活の中唐突に人を駆り立て、どこまでいってもたどり着かないものとして描かれています。
これらはつまり、異性の象徴ではないでしょうか。

主人公の僕がそうであったように、私たちは日々の穏やかな生活の中で、不意に嵐に遭うように、異性に惹かれていきます。その衝動は強く、気でも狂ったかのようで、穏やかだった日常を狂わせ、吹き飛ばし、それでも私たちは異性を求め、知ろうとします。ですがひとたび相手の異性を深く知ってしまったが最後、異性へのときめきや新鮮さは永遠に失われ、日常だけが残るんですね。「島本さん」は永久に失われ「有紀子」だけが残るという結末が、それを象徴しているように思いました。

村上春樹氏の著作の中では異色とも言える本なのですが、私は不思議とこの作品が好きです。純文学的に読み解くことが最も楽しい作品だからかもしれません。





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